1 はじめに
本町は県南西部に位置する、周囲を姫路市とたつの市に囲まれた面積約22.7k㎡の小さな町です。地方では人口減少が大きな課題となっていますが、京阪神への交通アクセスが良いためか、町発足時より人口は約3倍に増加し、近年は約34,000人余の人口を維持しています。
教育委員会には、管理課、社会教育課、文化推進課の3課があり、町内の学校教育、社会教育の充実に向けて、限られたスタッフで日々取り組んでいます。
以下、本町の取り組みをいくつか紹介します。
2 コンパクトな規模の強みを活かした学校教育の取り組み
<幼小中の連携>
町内には4幼稚園、4小学校、2中学校があり、約3,600名の園児児童生徒が学んでいます。各学校園は、他の学校園と最大1kmほどしか離れておらず、子どもだけでなく教職員の交流も図りやすい環境にあります。
(1)町教職員研修
本町の幼小中の教職員定数は約230名であり、一堂に会すことができる人数規模であるため、教職員としての資質向上と教職員相互の交流を図り、年2~3回程度、悉皆研修を教育委員会主催で、町校園長会等と連携して実施しています。
アットホームな雰囲気の中で、それぞれの学校園の課題が共有でき、有意義な研修になっています。
(2)幼小連携会議・小中連携会議
顔が見える連携のメリットを活かし、子どもたちが本町で学ぶ幼稚園2年間、小学校6年間、中学校3年間の合計11年間の繋がりを大切にすべく、一人ひとりの子どもに寄り添った実践を積み重ねるため、幼小連携と小中連携の取り組みを大事にしています。
会議による情報共有は勿論のこと、幼小の教員を対象にした研修、小中の教員相互の授業参観、幼小中生徒指導担当者会といった教員間の連携の取り組み、小中学生による幼稚園児とのふれあい、中学校入学前の小学生による授業見学や部活動体験、生徒会運営による学校説明等の子どもたちの交流活動も展開しており、ごくあたり前の取り組みを地道に継続しています。
また、各小中学校の学校評議員に、それぞれの校区の異校種の教員が任命されているのを、小中連携と言えるのかも知れません。
小小連携をはじめとする横糸と、校種間連携の縦糸を絡めて、トップダウンではなく各校園からのボトムアップを大切にした実践を積み重ねています。
(3)特別支援教育における連携
本町において特別な支援を要する子どもたちについて、各学校園、教育委員会、町社会福祉課
、町さわやか健康課、地域の関係機関が緊密な連携を図り、早期支援、継続支援を目的とした情報共有を行っています。
コンパクトがゆえに、相談体制の充実や連携が図られており、「互いの顔が見える取り組み」を合言葉に、コーディネーターネットワーク会議、特別支援連携協議会、ケース会議等の会議が迅速に開催できています。
また、町内の特別支援学級の横の連携を図るため、「なかよし会校外学習」を実施して教員・児童生徒の交流を図っています。
3 「和のまち太子」のつながり
本町と大阪府太子町、奈良県斑鳩町は、聖徳太子ゆかりの地として、20年前から「友好都市」締結を行っています。同様に3町の次世代を担う中学生が一堂に集い、お互いの町の特色を理解し、親睦・交流を図るため、「中学生太子サミット」を開催しています。
会場は3町持ち回りとなっており、さまざまな工夫を凝らしたおもてなしを担当町の中学生が考えます。聖徳太子のご縁でお互いの町の文化や学校のようすなどの話で交流できるこの取り組みは、まさに「和をもって貴となす」の言葉のとおりであると思います。
4 「ふれあい体験活動」を礎にした社会教育の展開
<学校外の子どもたちの学び>
「町民の学習ニーズに応える生涯学習の推進」「自主的・自発的な学習活動への支援」「生きる力を育む家庭と地域の教育力の向上」といったことをメインテーマに社会教育の充実に取り組んでいます。
(1)太子町「あそびっ子教室」
太子町版「放課後子ども教室」である本事業は、町内の子どもと地域の方をつなぐことを目標として開催しています。「五感を感じ記憶に残る体験:食育」「地域と連携:高校生と「連携」「歴史を知る」「伝統文化」の4つのテーマを設定し、小学1~6年生を対象に、年間20回実施しています。地域で活躍されている方を指導者として多方面の学習内容とすると共に、地元の高校と連携して、高校生を講師として依頼し、さまざまな年代との交流を通じて子どもたちに成長の機会を提供しています。参加した子どもたちが、五感で感じ、記憶に残る体験学習を心がけ、流れ作業的な体験学習とならないよう、一人ひとりが参加した実感を得ることに焦点をおいて事業計画をしているため、年々、参加希望者が増加しています。事業には欠かせない見守りや補助をお願いできるボランティアの確保と新たな事業の開拓、充実が今後の課題です。
〔平成29年度事業〕
・太子町の特産品を使った、いちじくジャムづくり、楽しいみそづくり
・わくわく吹奏楽、フラワーアレンジメント、みんなで歌おう、英語であそぼう
・茶道教室、ちぎり絵、百人一首教室 等
(2)ジュニアリーダー養成講座
約50年の歴史をもつ本事業は、野外活動やレクリエーションを指導するボランティアの青少年リーダーの育成を目的としています。小学4~6年生を対象に、スタンツ、キャンプに必要な知識・技能の研修、泊キャンプ、自然の中での体験活動、防災グッズづくり、ニュースポーツなどに取り組んでいます。
過去の本講座の受講生が、リーダーとしてこの事業に関わってくれるようになり、この事業の所期の目的が達成できていることは、教育委員会としても嬉しい限りです。
5 終わりに
全国的に少子高齢化が進行している中で、年少人口率は県下でもトップクラスの「若いまち」である本町において、学校教育の果たす役割や期待は非常に大きいものがあると考えます。また、その学校を取り巻く地域社会における多種多様な学習ニーズに応えることもより一層求められています。この学校教育と社会教育の充実があってこそ、本町教育の基本理念である「和のまち太子~笑顔あふれる 心豊かな人づくり~」の実現につながっていくものと考えています。限られた人的・物的資源を、知恵を活かして有効活動し、今後も本町教育の一層の発展のため邁進していきたいと考えています。
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